2013/11/04

The Grass so little has to do ⎯


絵を、多田進さんに折り本に仕立てていただきました。(写真左下)

題材は、エミリー・ディキンソンの詩です。

毎日、人にはやるべきことがいっぱい。
でも草には、とても大切な仕事とたっぷりの余白があって

そんな草への憧れをうたったこの詩が好きで、絵を描きました。

わたしにとっての草は、はだかの子ども。
生まれたまんまのはだかで生きて、乾草になれたらなぁ・・・

それで最期は納屋に住まずに 勢いよく風に飛ばされる!

憧れです。

ただいまウィリアム モリスにて展示中 11/28まで。
多田 進「オリホン」と遊ぶ http://tadasusu.exblog.jp/


 ' The Grass so little has to do ⎯ '   


The Grass so little has to do 
A Sphere of simple Green 
With only Butterflies to brood
And Bees to entertain 

And stir all day to pretty Tunes
The Breezes fetch along 
And hold the Sunshine in its lap
And bow to everything

And thread the Dews, all night, like Pearls 
And make itself so fine
A Duchess were too common
For such a noticing 

And even when it dies ⎯ to pass
In Odors so divine 
LikeLowly spices, lain to sleep 
Or Spikenards, perishing 

And then, in Sovereign Barns to dwell 
And dream the Days away,
The Grass so little has to do
I wish I were a Hay 

Emily Dickinson



' 草はなすべきことがあんまりない ⎯ '


草はなすべきことがあんまりない 
単純な緑のひろがり 
ただ蝶の卵を孵し
蜜蜂をもてなすだけ 

そしてその風が運んでくる
美しい調べに一日じゅう揺れ 
日光をひざに抱きかかえ
みんなにお辞儀をし 

そして一晩じゅう、真珠のような、露に糸を通し 
美しく着飾るものだから
公爵夫人も平凡すぎる
その装いの前では 

そして死ぬ時も ⎯ 神聖な
匂いにつつまれて去る 
眠りについた、野生の香料 
あるいは枯れていく、甘松のように 

それから、堂々たる納屋に住み 
毎日を夢のうちに過ごすだけ、
草はなすべきことがあんまりない
わたしは乾草になれたらいいのに 

エミリー・ディキンソン
岩波文庫「対訳 ディキンソン詩集」亀井俊介編 より